医療改革


2014.10.01

サステイナブルな医療をめざして<2/5>
医療ITの活用とアカウンタブル・ケア

医療ITの活用とアカウンタブル・ケア

米国における医療ITの導入は、2008~2010年ごろから始まった。よりよい医療の提供と、医療事故や重複検査などによる無駄を減らすために医療IT投資が積極的に行なわれたのである。一定の基準を満たすIT設備の導入を国が支援して、医療ITが整備されていった。2010年3月、医療保険制度改革法(いわゆるオバマケア)が成立し、さらにアカウンタブル・ケアが導入されて、ITインフラが広く活用されることになった。

もちろん、アカウンタブル・ケアの導入以前でも医療でIT技術は使われてきたが、どの程度活用するのかは各医師や医療機関の判断に任せられていた。しかし、アカウンタブル・ケア導入後は状況が一変する。

「患者のために積極的によいことをすれば医療提供側の収入が増えるというプラスの循環はそれまでなかった。アカウンタブル・ケアが導入されてからは、医療ITをどう有効活用して医療費を削減し、かつ医療の質を上げてインセンティブを得るのか、それを考えるようになりました」(佐藤講師)

医療ITとアカウンタブル・ケアは密接に関連している。具体的に医療ITを活用すれば患者にとって、どのようなメリットがあるのか。一つは、電子カルテに代表される個人の医療電子情報の利用(地域医療連携)だ。ある患者が都心のA病院で精密検査を受け、その数日後、離島で急病にかかり小さなB診療所で診察を受けた。B診療所にはMRIもCTもない。しかし、ある程度の医療IT環境が整っていれば、A病院のデータベースにアクセスして検査結果を確認し、医師は必要な情報を得て患者を診療できる。仮にB診療所に適切な薬がなくて別の病院へ行っても、同じように患者情報が共有できれば再検査を受けることなく、必要な薬を処方してもらえるだろう。その結果、追加的な医療費がかからずに済む。

二つ目は匿名化された医療データの蓄積とその利用だ。匿名化された医療情報がデータベース化され、その情報を医師が診療に利用できれば、より患者の状況に合わせた効果の高い治療方法を比較検討できるようになるはずだ。その結果、質の高い医療を提供できるようになり、患者満足度は上がるだろう。

「米国がうまかったのは2段階にしたところです。最初は国が推奨する一定水準の医療ITの導入を促しました。当然IT設備を揃えた医療提供グループが増えます。そして次にアカウンタブル・ケアが出てくると、その医療ITを使ってより良い医療を提供できたら、ボーナスを払うというインセンティブを付けたのです。こうなると医療提供側としては、ますます医療ITを使いたくなる。ここに意味があります。アカウンタブル・ケアと医療ITは実はセットになっています。しかし、日本では医療ITを使ってより良い医療を提供しても、それに対する具体的なインセンティブはまだありません」

現在、日本でも医療IT導入は進められているが、電子カルテの普及率が頭打ちになっていることに象徴されるように、その活用には多くの課題がある。医療ITの活用によって医療提供量が減れば(たとえば違う病院で同じ検査をする必要がなくなれば)、病院の収入が減る。しかし、米国のように「病院」と「患者」の二者を同じグループとしてとらえ、医療ITの活用による医療効率化と患者満足度の両輪をインセンティブでつなげば、双方にメリットが生じる。それをアカウンタブル・ケアでは実証しつつある。

日本ではまだ医療ITを導入すれば、どの程度医療費を減らせるのか、どの程度医療の質を向上させられるのかという具体的な議論はされていないと佐藤講師は言う。米国流に「インセンティブを付けます」ということが言えれば、日本での医療ITの導入はもっと進むのかもしれない。そして医療政策におけるトリレンマの解消にも、より早く近づける道筋が見える可能性も出てくるだろう。

サステイナブルな医療をめざして <5回シリーズ>

<1/5> 「アカウンタブル・ケア」とは何か(2014.10.01)
<2/5> 医療ITの活用とアカウンタブル・ケア(2014.10.01)
<3/5> 日本はアカウンタブル・ケアを導入できるか?(2014.10.17)
<4/5> 審査期間を短縮しても「安全」は確保する(2014.10.17)
<5/5> 医療制度改革、新たな一歩を踏み出す(2015.02.26)

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