医療改革


2014.10.17

サステイナブルな医療をめざして<3/5>
日本はアカウンタブル・ケアを導入できるか?

日本はアカウンタブル・ケアを導入できるか?

ブルッキングス研究所は、アカウンタブル・ケアを世界や日本で進めていく際の論点として次の5つを挙げている。

  1. 患者群の設定
  2. アウトカムの設定
  3. 医療行為のパフォーマンス測定
  4. パフォーマンスに基づいたインセンティブの実施
  5. 医療提供体制の変革

まず一つ目は患者群をどのようにとらえるかという点だ。

「国民皆保険の下では医療は国民全員に平等に提供されるべきものという前提になっています。ただ、そこからもう一歩踏み込んだ患者群の設定が必要だと、アカウンタブル・ケアの中では考えているわけです」(佐藤講師)

患者群を考える際にとくに必要なのは、アカウンタブル・ケアの大前提である「患者側に立った医療提供」という視点だ。より良い医療をよりサスティナブルに提供するために、必要な医療提供内容によって患者群をつくり、より重篤で、より手当が必要で、その方法を変えたら快方に向かうであろう患者群に注目して始めるというのだ。慢性疾患を持つ患者や難病患者だけというような誰かを特別扱いするために設定するのではなく、それぞれの患者が各自にとってより適切でかつ質の高い医療を受けられるように区分する。

二つ目はアウトカム、つまり「結果」の目標値の設定だ。たとえば、癌の5年生存率を現在の水準から何%まで上げるかなど、具体的な数値目標を決める。ここでさらにコストの目標値も設定できれば、医療費適正化などにもつながっていくだろうとブルッキングス研究所は指摘している。

三つ目と四つ目の論点は、実際に提供された医療サービスが「適正かつ一定の質が確保されたものであるのか」を評価することと、その評価結果に対してインセンティブを付与することだ。評価がでればそれに対してボーナスを支給するという仕組みはできるだろうが、問題は誰がどのように評価するかだ。アメリカでは、評価項目の中で患者満足度が重要視されている。患者満足度を計ることは難しいものの、患者がアンケートに答えることによって評価する方法がとられている。

最後の五つ目は、1~4を実現するために必要な医療提供の体制を日本社会全体で新たに構築することだ。現在、海外では医療提供の基本は外来診療であり、日本でも同じく入院という形を取らずに、より多くの患者を診ようという流れがある。仮に一つの患者群とアウトカムゴールが設定できたとして、その目標を達成するためには、患者群にふさわしい医療提供体制が日本社会に整っている必要があるのだ。各患者群への医療提供とそれに対する評価を適切に行うためには、前述した医療ITの活用のような組織、地域間の連携に加え、社会的基盤をどれだけ新しく作り変えられるかが重要なポイントとなるだろう。

今後、日本でアカウンタブル・ケアを導入する際、この五つのうち、特に問題となるものは何か。佐藤講師は患者群の設定と、評価に基づいたインセンティブの実施という従来とはと大きく異なる仕組みを医療提供側がどこまで許容できるか、この二つが議論のポイントになってくると言う。

「今の医療制度を続けていって、お金がなくなったから機械的に医療を減らすという世界に向かうのか。それとも、より患者のために頑張った医師、医療機関を評価するという世界に向かうのか。どちらも医療費削減という同じ目的のために行う行為ではあるけれど、国民にとってどちらがより幸せなのか。そういう選択を迫られているとも思います」

サステイナブルな医療をめざして <5回シリーズ>

<1/5> 「アカウンタブル・ケア」とは何か(2014.10.01)
<2/5> 医療ITの活用とアカウンタブル・ケア(2014.10.01)
<3/5> 日本はアカウンタブル・ケアを導入できるか?(2014.10.17)
<4/5> 審査期間を短縮しても「安全」は確保する(2014.10.17)
<5/5> 医療制度改革、新たな一歩を踏み出す(2015.02.26)

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