医療改革


2014.10.17

サステイナブルな医療をめざして<4/5>
審査期間を短縮しても「安全」は確保する

審査期間を短縮しても「安全」は確保する

日本の新薬開発の現場では、特許取得後から市販化されて患者の手に届くまでに約20年かかると言われてきた。同様に医療機器も審査機関が長い。しかし近年「審査期間の短縮化」が急激に進んでいるという。審査が早く進めば、開発側は開発期間が短くなって開発コストを抑えることができるし、また患者にとっては「より良いと思われる薬」が早く市販化されて使用できるようになる。その意味では、審査期間の短縮化は双方にとってメリットが大きい。しかし、メリットがあればデメリットもある。「審査期間が短くなるということは、分からないことも多い状態で市場に出ていくことになります。つまり実際に使いながら薬の副作用や機器の不具合をチェックするしかないわけです」(佐藤講師)

審査までの開発期間を短縮のため、米国で実施されている具体例の一つが「提供する患者群をより小さく設定する」ことである。

たとえば医薬品の場合、ある薬に対して効果の大きい患者と小さい患者、また副作用が出る患者と出ない患者などさまざまなケースが生じる。そのような各患者のデータを踏まえ、症状のより近い「小さな患者群」をつくって「その患者群に対する薬」とすれば、治験も集中的に実施できて申請までの時間が大幅に短縮できるというわけだ。市場競争が激化する中、より早く製品をマーケットに投入しようと、小さな患者群に向けて医薬品会社も積極的に動き始めているという。

また市販後調査においても小さな患者群は有効だという。医療機器は医師が使用するので問題があってもすぐに対応可能な場合が多いものの、医薬品はある程度の量が蓄積しなければ副作用が出てこない場合もあるため、問題の発見までに時間がかかってしまう。もし患者群が小さければ、医療ITを活用してその薬を投与した患者を追跡してデータを蓄積し、副作用の症状が現れた際には、そのデータを元に患者群内で使用注意の連絡をすぐに周知することもできるというのだ。

審査期間を短縮するためには、審査過程自体の見直しに加えて、継続的な市販後調査とその結果に対する適切な処置ができるよう、体制の整備やルールの見直し、医療機関と審査機関の連携などが必要となる。佐藤講師は言う。「今は企業だけが基礎開発分野を背負っているのではなくて、国も基礎研究資金を提供しています。つまり、国も医療分野へ壮大な投資をしているといえるわけです。基礎研究への投資に対して、遠く将来を見通し、安全確保のための審査期間のことなど、そこまで含めて検討すべきだとブルッキングス研究所は提唱しています。日本に今後アカウンタブル・ケアという考え方が導入されるとすれば、開発の時点から、どれくらいの価格で、どれくらいの費用をかけて、何を結果として求めるのかを考える。そういう発想の転換が必要になると思います」

医薬品であれ医療機器であれ、より安全で、より安く、より効果がある製品であってほしいのは誰しも同じだろう。審査期間の短縮化を企業側も患者側も求めているが、「より安全」と「より安く」は往々にして両立しない。そのギャップをどうやって埋めていくか、どれだけ満足するかも重要だが、どれだけ不満足を許容するかも重要だ。さまざまな限界がある中で、最大限のアウトカム「結果」を実現できる医療とは何か。アカウンタブル・ケアはその一つの答えになるのだろうか。

<参考>

○近年の医薬品・医療機器を取り巻く国内の状況
日本では2013年に医療分野が国家戦略の柱の一つとして位置づけられ、薬事法改正や健康・医療戦略室の設置など、さまざまな制度改革が続けて行われている。特に大きな変革の一つが薬事法の改正だ。これにより今まで同一に扱われてきた医薬品と医療機器が区別されることになり、医療機器の特性を踏まえた規制の整備が急務である。また審査期間を短縮するため、市販前の民間認証機関の有効活用やPMDAでの審査プロセスでの一層の合理化・迅速化が求められている。

○PMDAとは
正式名称は「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」
医薬品、医療機器等の審査及び安全対策、並びに健康被害救済の三業務を行う。

サステイナブルな医療をめざして <5回シリーズ>

<1/5> 「アカウンタブル・ケア」とは何か(2014.10.01)
<2/5> 医療ITの活用とアカウンタブル・ケア(2014.10.01)
<3/5> 日本はアカウンタブル・ケアを導入できるか?(2014.10.17)
<4/5> 審査期間を短縮しても「安全」は確保する(2014.10.17)
<5/5> 医療制度改革、新たな一歩を踏み出す(2015.02.26)

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